T.E.カーハート『パリ左岸のピアノ工房』

The Piano Shop on the Left Bank
2022年5月22日 読了
新潮クレスト・ブックス

裏表紙紹介から引用


記憶の底から甦る、あの音。鍵盤の感触。

どこでピアノのことを忘れてしまったのだろう?
愛情あふれるパリの職人に導かれ、音楽の歓びを取り戻した著者が贈る、切なく心温まる傑作ノンフィクション。


あらすじ

パリに住むアメリカ人の著者が、ピアノ職人と出会い、再びピアノを弾くようになったことから気づく、ピアノへの深い愛情とパリの職人のこだわり、ピアノ教師や個性的な調律師など、そこで知り合った人達とのやり取りを、パリの街の季節ごとの描写を背景に描いた、24章から成るエッセイ

解説

著者と共に、職人リュックの店「デフォルジュ・ピアノ」に持ち込まれる個性豊かな名器たちの由来を訪ね、内部をのぞき込み、ピアノの起源と進化の過程を旅し、子どもの頃の発表会前の緊張を味わい、著名なピアノ教師によるワークショップに参加しよう

大袈裟な言葉や表現はなくても、ピアノと音楽が生活と共にあることの素直な歓びに溢れている

そして、もう一つの魅力は著者が出会う人々

リュックの店に集まるお客や友人たち、アル中でホームレスだが凄腕の調律師、再開したピアノレッスンを担当するピアノの先生、仕事場として借りたアパルトマンの窓から中庭越しに聞こえてくるピアノ伴奏の演奏者、子ども達が通う音楽学校の校長先生など、どの人物のエピソードも、慎み深い距離感の中に、共に音楽を愛する者同士の敬意と親愛の情が滲む

この本を読んでいる間、傍らのPCにGoogleマップでパリの街の地図を映していた。

パリ6区

カルチェラタン、サン=ルイ島、ヴァル=ド=グラース教会、サン・ジャック通り、、、

ストリートビューで狭い通りを辿り、教会の正面ファサードを見上げ、脇に映るバイクを追いかけていると、クラクションの音や、カフェのテラス席で愉しんでいる人々の会話が聞こえてくる気がする

ピアノを弾いている(いた)人はもちろんだけど、これからやってみようかなと思っている人にも、ぜひ読んでほしい